世界各国に投資をしたいという方に向けて以前「セゾン資産形成の達人ファンド」についてお伝えしました。
しかし、当然ですが他にも世界各国に投資できる投資信託は存在しています。
その一つが「ロイヤルマイル」の愛称で親しまれている「ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド」です。
ロイヤルマイルはMorningstarの「Fund of the year 2020」の国際株式部門で最優秀賞を受賞しています。
では、果たしてロイヤルマイルは投資する価値のある投資信託なのでしょうか?
本日はロイヤルマイルの特徴をお伝えした上で、運用実績や今後の見通しを踏まえて投資妙味を吟味していきたいと思います。
関連記事:【ブログ随時更新】今買いの一番儲かる投資信託銘柄はどれ?「安全」且つ「これから上がる」個人投資家が買うべき高利回りファンドを徹底調査!
運用を担当するベイリーギフォードとは?
販売しているのは三菱国際投信ですが、実際に運用を実行しているのはベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント(ヨーロッパ)リミテッドです。
ベイリー・ギフォード・インベストメント・マネジメント ( ヨ ー ロ ッ パ )リミテッドは、ベイリー・ギフォード・オーバーシーズ・リミテッドの子会社です。
更にベイリー・ギフォード・オーバーシーズ・リミテッドは、 英国の独立系運用会社であるベイリー・ギフォード &カンパニーの100%子会社です。
ベイリーギフォード社はグループ全体で50兆円近い資産を運用する世界有数の資産運用会社です。
年金機関も運用を依頼している安心感のある会社によって運用がなされています。
ロイヤルマイルはベイリー・ギフォード・ ワールドワイド・ロング・ターム・ グローバル・グロース・ファンド -クラスC・JPY・アキュムレーション(円建)に投資をする形で運用されています。
直接ベイリーギフォードのファンドに投資できればよいのですが、三菱国際投信が販売することで手数料水準が高くなります。
三菱国際投信とベイリーギフォードの両方に手数料を払う必要がありますからね。
販売手数料:3.3% (税込)
信託手数料:1.5895% (税込)
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド(=ロイヤルマイル)が採用するLTGG戦略とは?
ロイヤルマイルはLTGG戦略という戦略に則って投資を実行しています。(参照:ロイヤルマイルの解説書)
Long Term | 長期的な視野をもち、短期的な株価や業績の変動に囚われない |
Global | 新興国を含む世界の株式から企業の魅力度に応じて投資配分を決定 |
Growth | 5年、10年の長期で継続可能な成長力を持つ企業に投資 |
具体的に落とし込んだ銘柄選定基準が以下となります。
産業の魅力度 | 1.今後5年で売上が2倍になりうるか? 2.長期的な見通しはあかるいか? |
企業の競争力 | 3.競争優位な点は何か? 4.企業文化は他社と明確に差別化されているか?事業環境の変化に適用可能か? 5.なぜ消費者に選好されているのか? |
財務基盤の強さ | 6.ROEは高いか? 7.ROEは上昇する見込みがあるか? |
経営陣の資質 | 8.どのように資本を配分しているか?(配当?設備投資?買収?等々) |
バリュエーション | 9.株価が5倍以上になる可能性があるのか? 10.なぜ割安に放置されているのか? |
ロイヤルマイルと同様の運用を行った場合のリターンは以下のようになっているとロイヤルマイルは想定しています。
しかし、これはあくまでバックテストに基づいたデータなので将来にわたって高いリターンが続くとも限りません。
ロイヤルマイルの組入上位銘柄と業種
まずは組入業種を見ていきます。2024年10月末時点で以下の通りとなっています。上位に「一般消費財」が入っているのはAmazonがポートフォリオの中でも上位にいることが要因となっています。
業種 | 2024年10月 | 2024年1月 | 2023年9月末時点 | 2023年7月末時点 | 2022年11月時点 |
情報技術 | 32.0% | 34.5% | 28.5% | 28.5% | 25.3% |
一般消費財・サービス | 29.3% | 27.5% | 33.1% | 31.6% | 335.0% |
コミュニケーション・サービス | 16.9% | 13.4% | 13.2% | 12.4% | 14.1% |
ヘルスケア | 10.3% | 13.2% | 15.1% | 15.6% | 22.1% |
金融 | 5.4% | 6.0% | 4.7% | 6.1% | – |
資本財・サービス | 2.8% | 2.2% | 3.2% | 3.4% | 2.1% |
素材 | 2.6% | 0.3% | 0.5% | 0.6% | 0.4% |
基本的には1位に「情報技術セクター」が入っていますが、ハイテク主体のポートフォリオと言っても良いでしょう。
このハイテクに偏ったポートフォリオは現在の米国の金融引き締め時期はかなり逆風となります。
後続でリターンを見ていきますが、かなり成績は悪化しているのではと推測できます。
2024年1月末時点のポートフォリオ
MEITUAN、TENCENTなどが2022年9月末時点では上位にいたのですが、思い切り順位を下げました。
香港ハンセン株価指数など中国関係の株はとにかく苦しいので、株価が下がったことでの順位変動でしょう。
No. | 銘柄 | 国・地域 | 業種 | 比率 |
1 | NVIDIA CORP | アメリカ | 情報技術 | 7.7% |
2 | AMAZON.COM INC | アメリカ | 一般消費財・サービス | 6.5% |
3 | MEITUAN-CLASS B | 中国 | 一般消費財・サービス | 4.9% |
4 | TRADE DESK INC/THE -CLASS A | アメリカ | コミュニケーションサービス | 4.3% |
5 | INTUITIVE SURGICAL INC | アメリカ | ヘルスケア | 4.1% |
6 | NETFLIX INC | アメリカ | コミュニケーションサービス | 3.7% |
7 | PINDUODUO INC-ADR | 中国 | 一般消費財・サービス | 3.7% |
8 | ASML HOLDING NV | オランダ | 情報技術 | 3.4% |
9 | ADYEN NV | オランダ | 金融 | 3.3% |
10 | MERCADOLIBRE INC | ブラジル | 一般消費財・サービス | 3.3% |
2024年10月末時点では米国のハイテク銘柄がしめています。依然として中国企業のPDDがランクインしています。象徴的なのはNvidiaですね。Nvidiaは米国の半導体企業でAIに欠かせない技術を提供しており株価は最高値を取り返しています。
今、米国で最もブームとなっている企業であり勢いがあるので、株価上昇に伴い構成首位になっているのです。
40銘柄組み入れていたらどの銘柄かは吹き上がるものですよね。
<参考>過去の構成銘柄上位
2022年5月には中国のアリババが入っていましたし、テンセントも入っていました。
この2つはあっという間に上位から消えました。中国株の暴落は凄かったです。これがロイヤルマイルのリターンの足を引っ張っています。
2023年以降は生成AIバブルの影響で急騰したNVIDIAが構成トップになっています。
No. | 2024年10月末時点 | 2024年1月末時点 | 2023年10月末時点 | 2023年7月末時点 | 2022年11月末時点 | 2022年8月末時点 | 2022年5月末時点 | 2022年2月末時点 |
1 | NVIDIA CORP | NVIDIA CORP | AMAZON.COM INC | NVIDIA CORP | AMAZON.COM INC | TESLA INC | Amazon | MODERNA |
2 | AMAZON.COM INC | AMAZON.COM INC | NVIDIA CORP | AMAZON.COM INC | MODERNA INC | AMAZON.COM INC | 美団 | AMAZON |
3 | MEITUAN-CLASS B | PINDUODUO INC-ADR | PINDUODUO INC-ADR | TESLA INC | ASML HOLDING NV | MEITUAN-CLASS B | ILLUMINA | ILLUMINA |
4 | TRADE DESK INC/THE -CLASS A | ASML HOLDING NV | TESLA INC | ASML HOLDING NV | TESLA INC | KERING | アリババ | TESLA |
5 | INTUITIVE SURGICAL INC | ATLASSIAN CORP | ASML HOLDING NV | PINDUODUO INC-ADR | NVIDIA CORP | NVIDIA CORP | テンセント | KERING |
6 | NETFLIX INC | SHOPIFY INC – CLASS A | ATLASSIAN CORP | DEXCOM INC | KERING | ASML HOLDING NV | テスラ | ASML |
7 | PINDUODUO INC-ADR | DEXCOM INC | TRADE DESK | KERING | PINDUODUO INC-ADR | PINDUODUO INC-ADR | KERING | NVIDIA |
8 | ASML HOLDING NV | INTUITIVE SURGICAL INC | DEXCOM INC | TRADE DESK INC/THE -CLASS A | DEXCOM INC | TENCENT HOLDINGS LTD | NVIDIA | ALIBABA |
9 | ADYEN NV | ADVANCED MICRO DEVICES | KERING | ADYEN NV | MEITUAN-CLASS B | ATLASSIAN CORP PLC-CLASS A | PINDUODUO | TENCENT |
10 | MERCADOLIBRE INC | NETFLIX INC | NETFLIX INC | MEITUAN-CLASS B | ILLUMINA INC | MODERNA INC | ASML | MEITUAN |
美団(MEITUAN)は中国の電子商取引プラットフォーム、中国最大の口コミサイトなどの事業を展開している大型企業グループです。
中国のアマゾン(EC)であり、Google(レストランや旅行口コミ)であり、Uber(フードデリバリーも展開)でもあります。
株価自体は高値からなんと72%も下落していましたが、現在は回復中ですが、中国の市況次第では大きく上昇する可能性を秘めています。
全般的に引き続きグロース株に大きく投資しています。ハイテク産業に大きく張っているということができます。
ロイヤルマイルの運用実績(基準価額チャート)
ロイヤルマイルの運用実績は以下となっています。対象としてあげている指数は全世界の株式の時価総額加重平均指数である
「MSCI オールカントリー・ワールド インデックス(配当込み、円ベース)」となっています。
つまり世界の株式の平均点が以下の灰色ということですね。
ハイテク企業はコロナショック以降の金融緩和と新生活様式に適用する形で大きく株価が上昇しました。
結果的に株価水準が高くなり2021年に入ってから株価が停滞し、2021年年末から2022年にかけて大きく下落。そしてこの下落はまだ終わっていません。
AIブームで米国株指数は反発していますが、大型テックのみに資金が入っているのを見る限りは短命で終わると考えています。
米国のハイテクグロース株を主体としたポートフォリオを展開する「ARKK」というファンドの株価は以下の通りです。
結果として、現時点で全世界株式と殆ど変わらないリターンとなってしまっています。
値動きが激しくリスクが高い分ロイヤルマイルの方がシャープレシオは低く魅力の少ない投資信託ということになります。
全世界株式に連動するリターンを提供するeMAXIS Slim全世界株式との比較は以下の通りとなります。
ファンド名 | ロイヤルマイル | eMAXIS Slim全世界株式 |
---|---|---|
トータルリターン1年 | -38.98% | 3.98% |
トータルリターン3年(年率) | 13.05% | 14.42% |
シャープレシオ1年 | -1.17 | 0.23 |
シャープレシオ3年 | 0.44 | 0.80 |
標準偏差1年 | 33.36 | 17.26 |
標準偏差3年 | 29.75 | 18.12 |
投信のリターンの優劣を図る上で重要なシャープレシオは全世界株式を大幅に下回っており平均点以下のファンドということになります。
他にいくらでも良い選択肢があるはずです。
【ブログ随時更新】今買いの一番儲かる投資信託銘柄はどれ?「安全」且つ「これから上がる」個人投資家が買うべき高利回りファンドを徹底調査!
〜金利コラム〜なぜ金融緩和をするとハイテク成長株が上昇するのか?
なぜ金融緩和で金利が低下するとハイテクグロース株が上昇するか疑問に思われた方もいらしゃると思うので簡単に補足します。
コロナショックを受けて米国でも金利水準が大幅に低下しました。ハイテクグロース企業は利益の伸びが大きく、将来の利益水準が高くなっていきます。
企業価値というのは将来生み出す利益の現在価値が大きく影響してきます。将来の利益を現在価値に割り引くのに重要なのが金利水準です。
金利が高いと将来の利益の現在価値は低くなりますし、反対に金利が低いと将来の利益の現在価値は高くなります。
現在は上昇している局面なので厳しいですが、金利が限界まで下げられると、将来利益の伸長が大きくなると期待されるグロース株の株価が上昇していくことになるのです。
ただ、現在2024年11月時点では緩やかな利下げが行われており、グロース株が上昇するような低金利政策にはほど遠いです。
また、むしろ歴史的観点から、最初の利下げが行われると不況が早めに到来し、むしろ株式全体の大幅下落、ひいてはグロース株の壊滅的な下げもう考えられる局面なのです。
ここおから再びインフレが再加速する可能性が高くなってきています。1970年台の二の舞になってしまうのではないかと多くの関係者が囁いています。
2024年以降の今後のロイヤルマイルの見通し
2021年以降のロイヤルマイルとMSCIオールカントリーに連動するeMAXIS Slim 全世界株式との比較が以下となります。
青色:ロイヤルマイル
赤色:eMAXIS Slim 全世界株式
ハイテク株のブームが終わった期間でみると圧倒的に全世界株式に劣後した成績となっていることがわかります。
全期間でみるとパンデミック後のバブルを吐き出しているのがわかります。直近は全世界株式と同じ動きとなっています。
いまだに米国では高いインフレ率が継続しており中央銀行であるFRBは金融引き締めを強めていく姿勢を明確にしています。
2024年11月時点において、米国の表面上のインフレ率は一定の沈静化が見られるものの、基調的なインフレ率は依然として高止まりしている状況にあります。また、2025年1月にはトランプ大統領が就任する見通しであり、同政権下ではインフレを助長する政策が展開される可能性が高いと考えられます。
トランプ政権の政策がインフレに与える影響については複数の経路が想定されており、この動向を先取りする形で、米国の金利は既に上昇局面に入っています。その結果、2025年におけるインフレ再燃の蓋然性が一段と高まりつつあります。
仮にインフレが再び加速し、金利が急上昇する局面が到来した場合、グロース株を中心とした企業群にとっては厳しい市場環境が再び訪れることが予想されます。このような状況下では、投資家に対し慎重かつ戦略的な対応が求められる局面となるでしょう。
今後、しばらくロイヤルマイルのような銘柄に投資するのはリスクが高いでしょう。
このようにタイミングをはかって投資する必要がある投資信託や個別銘柄は深い知識と熟練した技術が必要になります。
投資初心者の方はいかなる局面でも安定して利益が狙える選択肢を選ぶことが肝要です。
そのような選択肢として筆者が注目して投資しているのがヘッジファンドです。
ヘッジファンドは下落相場も抑制したり利益をとりながら安定したリターンを積み上げていっています。
以下では筆者が投資しているファンドを含めて紹介しているのでご覧いただければと思います。
【2024年版】国内優良ヘッジファンドをおすすめ順にランキングにして紹介!
ロイヤルマイルのSNSや掲示板などでの評価は?
一応見ていきましょう。
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド予想分配金提示型は昨年購入を検討していた。
運用方針や情報開示は良いんだけど中国株比率が高くカントリーリスクを懸念して結局見送り。
今となっては見送った判断が正解だったけど基準価額が6,000円台まで下落するとは思わなかった… https://t.co/Vijj9TuTfL pic.twitter.com/74aOQzcNR5— M.H@投信評価損益毎朝公開 (@M_H225trade) May 26, 2022
ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド 愛称:ロイヤル・マイル
基準価額の値動きがやばい💦
ナイアガラの滝かよ💦真のアクティブファンドともてはやされていた時代が懐かしい… pic.twitter.com/l8tOyEg3jn
— サラリーマン乞食@小銭拾いで生きていく (@yaorim2020) May 12, 2022
投信積立のチャレンジ枠をリバランス。
out ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド
out iFreeレバレッジ ATMX+
in eMAXIS Neo 宇宙開発ロイヤルマイルは、リターンが全然期待外れ。レバATMXは中国リスクあり過ぎ
素直にアクティブ、中国レバは長期にやっぱ不安。ということで宇宙に賭ける— 司艶里(シエンリ)@米株、CFDデイトレLv.1 (@shienri) July 29, 2021
その投資信託については、三菱UFJ国際-ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンドを買ったりもしてますが、現時点では大きなリターンは得られず。
ナスダックの値動きに近い感じですね。そのナスダックも今年はまだ上値の重い展開。
— マモン@うつ病、ドン底から復活への道 (@mmn_investing) June 2, 2021
厳しい評価が多いですが、引き締め時は無理ですね。
今後の見通しとまとめ
「ロイヤルマイル」は、かつての話題性とは裏腹に、現在の投資環境では高コスト・低リターンの典型例として位置づけられます。他の低コストかつ安定した選択肢と比較して、明確に投資妙味を欠く存在です。
特に初心者は、無駄な手数料を支払うリスクの高いファンドに投資するよりも、全世界株式型ファンドや優良ヘッジファンドのような、安定性と収益性を兼ね備えた選択肢を優先すべきです。
「ロイヤルマイル」のようなパフォーマンスに不安の残るファンドは、冷静に見極め、慎重に避けるべき対象と言えるでしょう。
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