こんにちは。今回も、私の個人的な趣味である投資信託などファンドの分析をしていきたいと思います。
本日取り上げるのは「農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド」です。特に、ブロガーの間でも2019年から話題になっています。
「農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド」の人気がじわりと高まっている。純資産総額が10億円程度の小規模な投資信託だが、今年1月に発表された「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2018」では、初登場で19位にランクイン。アクティブ(積極運用)型で3位に食い込んだ。長期投資を前提としたファンドとして注目を集めつつある。
出所:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43608460R10C19A4000000/
商品名が長く覚えにくいな、という感想を抱いたのですが、今回はこの「農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド」を分析していきます。
関連記事:【ブログ随時更新】今買いの一番儲かる投資信託銘柄はどれ?「安全」且つ「これから上がる」個人投資家が買うべき高利回りファンドを徹底調査!
農林中金<パートナーズ>長期厳選投資「おおぶね」とは?
米国の上場株式を主要投資対象とする。徹底したファンダメンタル・ボトムアップアプローチにより、付加価値の高い産業、圧倒的な競争優位性、長期的な潮流の3つの基準を満たす、持続可能なキャッシュ・フロー創出能力を有する「構造的に強靭な企業」に長期厳選投資を行う。農林中金バリューインベストメンツより投資助言を受け、ポートフォリオを構築する。原則、為替ヘッジは行わない。ファミリーファンド方式で運用。6月決算。
出所:http://www.morningstar.co.jp/FundData/SnapShot.do?fnc=2017070502
米国上場株式を対象としてるんですね。近年の米国株人気は凄いですからね。投資対象としても魅力的です。
堅実に資産を大きくできる先というのは私も同意です。(ただし、2023年相場はすでに難易度が高く、個人で株の売買ははっきり言って危険です)
個人では博打である株式投資も、おおぶねに任せれば良いリターンが期待できるのでしょうか?こちらに今回はフォーカスしていきます。
ファンドの概要は以下です。
理念は以下です。
ファンドの目的
この投資信託は、投資信託財産の中長期的な成長を目指して運用を行います。
ファンドの特色
- 圧倒的な競争力を有する企業への長期厳選投資により投資信託財産の中長期的成長を目指す アクティブファンドです。
- 米国の上場株式を主要投資対象とします。
- 徹底した深い海外企業調査を通じて、①付加価値の高い産業、②圧倒的な競争優位性、③長期的な 潮流の3つの基準を満たす「構造的に強靭な企業®」に長期厳選投資を行います。
- 組入外貨建資産については、原則として為替変動リスクを回避するための為替ヘッジは行いません。
- 農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)より投資助言を受け、ポートフォリオを構築します。
米国株で、中長期で、圧倒的な競争優位、付加価値の高い会社、となるともう、どうせGAFAMやNVDA(Google Apple Facebook Amazon Microsoft)なんでしょう?
と思ってしまいますし、それなら自分で米国株買えばいいよなーと想像しています。
実際に次でポートフォリオを見ていきましょう。
上位の組入銘柄を解剖!(農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)より投資助言あり)
それでは注目のポートフォリオを見ていきましょう。
農林中金バリューインベストメンツ(NVIC)より投資助言を受け、ポートフォリオを構築しているようです。
- 農林中金バリューインベストメンツ株式会社(以下、NVIC)は、農林中央金庫の子会社として、国内外の株式にかかる投資助言業務を行っております。
- 運用メンバーは、日本において2007年から株式長期厳選投資を開始した当投資分野におけるフロントランナーの1社です。
- 現在では、これまでに培った株式長期厳選投資ノウハウを最大限活用し、日系投資助言会社ながら米国現地企業への訪問を地道に繰り返しながら(年6回程度の米国現地訪問)、投資先候補企業を厳選することで、米国企業を対象とした株式長期厳選投資にかかる投資助言を行っています。
ポートフォリオ上位業種の推移です。昨年末から情報技術セクターの比率を下げているのが印象的ですね。
不況に備えて若干ヘルスケアセクターの比率を高めていたように見えましたが、ここにきて少し下げています。
上位業種 | 2024年10月 | 2024年1月 | 2023年9月 | 2023年7月 | 2023年4月 | 2022年12月 |
資本財・サービス | 23.7% | 22.5% | 21.6% | 20.5% | 20.5% | 19.6% |
ヘルスケア | 15.4% | 15.7% | 18.0% | 17.9% | 16.2% | 16.1% |
情報技術 | 15.0% | 15.2% | 13.5% | 11.7% | 12.6% | 23.5% |
金融 | 14.7% | 16.5% | 15.8% | 15.8% | 15.7% | 5.0% |
生活必需品 | 11.8% | 15.0% | 15.8% | 16.3% | 17.0% | 15.5% |
一般消費財・サービス | 11.0% | 7.7% | 7.8% | 7.4% | 7.5% | 8.3% |
素材 | 7.0% | 3.90% | 3.80% | 3.90% | 3.90% | 5.30% |
コミュニケーションサービス | 1.40% | 4.0% | 3.8% | 6.5% | 6.5% | 6.7% |
資本財のウェイトが一貫して高く、一般消費財や素材の比率が高くなっています。好景気に行う投資です。
資本財は勢いのある銘柄はそこまで多くありませんが、具体的な銘柄を見ていきましょう。2024年10月末の構成上位銘柄は以下となります。資本財銘柄は上位10に入っておらず・・・下の方で固めているんでしょうか。
順位 | 銘柄 | 業種/セクター | 組入比率 |
1 | COSTCO WHOLESALE CORP | 生活必需品 | 6.2% |
2 | TEXAS INSTRUMENTS INC | 情報技術 | 6.0% |
3 | VISA INC-CLASS A SHARES | 情報技術 | 5.7% |
4 | S&P GLOBAL INC | 金融 | 5.2% |
5 | AMPHENOL CORP-CL A | 情報技術 | 5.0% |
6 | EDWARDS LIFESCIENCES CORP | ヘルスケア | 4.0% |
7 | VERISK ANALYTICS INC | 資本財・サービス | 4.0% |
8 | MICROSOFT CORP | 情報技術 | 3.9% |
9 | JACK HENRY & ASSOCIATES INC | 金融 | 3.9% |
10 | ZOETIS INC | ヘルスケア | 3.9% |
1位のコストコは日本人にも馴染み深いですよね。コストコが元気というのは、消費が活発であることの証です。実際に米国の経済は粘り強く、コストコの株価も指数を上回りました。
ポートフォリオとしては非常に固い、老舗の安定的に株価を伸ばしている企業とハイテクがバランスよく配置されています。
おおぶねは安心して米国株投資をしたいという人には向いている商品と言えるかもしれません。
2023年以降はAIブームで大型テック株のみに資金が入り指数が上昇しましたが、中小型株は置き去りで、実際に状況は大きく変わっていない、非常に危険な状況なのです。
2024年後半以降はしばらくリターンが良くなることは期待できないでしょう。加えて、現在は円高に反転する兆しも見えており、為替のクッションもなくなりつつあります。
米国は利下げで日本は利上げですからね。
因みに過去のポートフォリオが以下です。株価の変動で順位が入れ替わっているだけで上位銘柄は変わっていませんね。
2024年10月末 | 2024年1月末 | 2023年10月末 | 2023年7月末 | 2023年4月末 | 2022年12月末 | 2022年7月末 | 2022年4月末 | |
1 | COSTCO WHOLESALE CORP | COSTCO WHOLESALE CORP | COSTCO WHOLESALE CORP | COSTCO WHOLESALE CORP | MCCORMICK & COMPANY | MCCORMICK & COMPANY | AMPHENOL CORP-CL A | THE WALT DISNEY |
2 | TEXAS INSTRUMENTS INC | AMPHENOL CORP-CL A | AMPHENOL CORP-CL A | THE WALT DISNEY CO. | THE WALT DISNEY CO. | THE WALT DISNEY CO. | MCCORMICK & COMPANY | VISA |
3 | VISA INC-CLASS A SHARES | TEXAS INSTRUMENTS INC | TEXAS INSTRUMENTS INC | MCCORMICK & COMPANY | COSTCO WHOLESALE CORP | AMPHENOL CORP-CL A | THE WALT DISNEY | BECTON |
4 | S&P GLOBAL INC | VISA INC-CLASS A SHARES | VISA INC-CLASS A SHARES | AMPHENOL CORP-CL A | TEXAS INSTRUMENTS INC | TEXAS INSTRUMENTS INC | TEXAS INSTRUMENT | TEXAS INSTRUMENT |
5 | AMPHENOL CORP-CL A | S&P GLOBAL INC | S&P GLOBAL INC | TEXAS INSTRUMENTS INC | AMPHENOL CORP-CL A | VISA INC-CLASS A SHARES | VISA | NIKE |
6 | EDWARDS LIFESCIENCES CORP | MCCORMICK & COMPANY | MCCORMICK & COMPANY | VISA INC-CLASS A SHARES | S&P GLOBAL INC | COSTCO WHOLESALE CORP | NIKE | CHURCH&DWIGHT |
7 | VERISK ANALYTICS INC | THE WALT DISNEY CO. | NIKE INC | S&P GLOBAL INC | VISA INC-CLASS A SHARES | NIKE INC -CL B | COSTCO | SHERWIN-WILLIAMS |
8 | MICROSOFT CORP | JACK HENRY & ASSOCIATES INC | CHURCH & DWIGHT | SHERWIN-WILLIAMS CO/THE | CHURCH & DWIGHT CO INC | TJX COMPANIES INC | CHURCH&DWIGHT | COLGATE |
9 | JACK HENRY & ASSOCIATES INC | CHURCH & DWIGHT CO INC | TJX COMPANIES INC | TJX COMPANIES INC | SHERWIN-WILLIAMS CO/THE | CHURCH & DWIGHT CO INC | TJX COMPANIES | MCCORMICK & COMPANY |
10 | ZOETIS INC | TJX COMPANIES INC | THE WALT DISNEY CO. | JACK HENRY & ASSOCIATES INC | JACK HENRY & ASSOCIATES INC | SHERWIN-WILLIAMS CO/THE | HONEYWILL | COSTCO |
次に、具体的なリターンを見ていきましょう。
おおぶねの運用利回りとは?(S&P500、ひふみ投信と比較)
それでは見ていきましょう。まずは基準価額が上がっているのか下がっているのか、で投資信託としてそもそも機能しているのかを見ます。
設定してから右肩上がりですね。コロナショックは深い傷を負っていますが、その後金融緩和に支えられ急激に株価が伸びています。また。円安で+40%以上も資産が膨らんでいますので、実際の運用は毎年5〜7%程度でしょう。
以下の通り円建のS&P500指数と同等の成績となっています。「おおぶね」は円建なので比較すべきは円建のS&P500指数となっています。
青:おおぶね
緑:S&P500指数(円建)
赤:S&P500指数(ドル建)
ほとんど円建のS&P500指数と同じ動きをしていますし、結局劣後してしまっていますね。
成績がいいのではなく、ただ投資している米国株が好調であり、円安の恩恵を最大限受けただけなのです。銘柄を頑張って選定しているおおぶねではなく、投資してほったらかしで良いインデックスファンドの方がパフォーマンスが良かったのです。
ただ、これからは米国株も今後の見通しは暗くなっています。(後述)
ちなみに以下はひふみ投信との比較になりますが、ひふみよりは良いリターンとなっていますね。ひふみの成績不振と2020年以降の米国バブルが功を奏した形になっています。
おおぶねはバブルが終わったこれからが勝負ですね。5年実績の中でバブルを引いたのは相当運が良かったと言えます。
青:おおぶね
赤:ひふみ投信
→やめたほうがいい?評判だった「ひふみプラス」「ひふみ投信」の時代は終わった?まだ上がる?暴落の理由や今後の見通しを含め徹底評価!
投資信託「おおぶね」の今後の見通しはやばい?
さて、米国株は2024年に入ってもハイリターンが狙える中小型銘柄群には大嵐が吹き荒れています。
大型株にしか資金が入らない状況は極めて危険です。投資信託は銘柄を保有し続けなければならないというバイアスがあるので、ここから市場の暴落が来ても免れることはできません。
キャッシュ比率を増やせてもマーケットタイミングを測るスキルも必要になります。
ハイテク銘柄は金利上昇に弱く、2021年後半からインフレが発生したことで金融引き締めが意識され長期金利は上昇していきました。それに伴いハイテク銘柄は軟調な値動きとなり、結果として「おおぶね」も2021年末から2023年にかけてリターンが沈みました。
リターンが良いように見えますが、それは円安が要因で、日本のほとんどの米国株に投資するファンドは銘柄選定が的外れでもドル高のおかげで生き残ることができているのです。
おおぶねはまだ実績が浅いファンドですので、10年以上の長期の実力がわかりません。2020-2021年は超上昇相場だったので相当運のよいファンドでもあります。
本来、もっと下落しているはずなのですが、まだなんとか耐えているのは円安のおかげです。S&P500指数のドル建と円建に大きな差があるのは円安が原因です。
2024年11月時点で、米国は金融引き締めを淡々と実行していますがインフレはおさまっていませんし、トランプ政権となりインフレ圧力がかなり増幅すると考えております。
つまり、根深い不況も近いのではないかと感じます。歴史は繰り返しますからね。
因みに現在と同様の局面は1970年代にもありました。1970年代は現在と同等のインフレが発生した結果、10年間横ばいとなりました。
因みに直近でいうと2018年も現在よりは状況はマシですが同様の展開となりました。
2018年は利上げとともに資産圧縮が行われたのですが、年初と年末で株価は暴落に見舞われました。
基本的に、株式市場で有利な期間というのは長期金利が低い時期です。(米国10年債の利回りをみていればokです)
直近、金融引き締めを行なったのは2018年でした。2018年は何が起きたのでしょうか?
米国の株式市場は、米中貿易摩擦激化への警戒感に加え、米長期金利の上昇や企業業績への懸念の強まり等から、軟調な展開となりました。
欧州の株式市場は、域内景気の減速懸念や英国の欧州連合(EU)離脱問題に米株の調整が加わり、下落しました。
日本の株式市場は、長期金利上昇を受けた米国株の下落、中国経済および企業業績に対する懸念の強まり等から大幅な下落を余儀なくされました。
出所:https://www.smam-jp.com/market/report/lastmonth/global/month181102gl.html
リーマン・ショック10年から1カ月も経たないうちに、世界同時株安は起きた。10日のニューヨーク市場でダウ平均が800ドル超の下げを記録したのを受け、株安は東京、上海はじめアジア市場や欧州市場など世界に波及した。米長期金利の上昇が引き金だが、米中貿易戦争などによる世界経済の不安が背景にあった。
国際通貨基金(IMF)は2018年の世界経済見通しを3.7%と7月時点より0.2ポイント下方修正した。2019年も3.7%と0.2%の下方修正である。とりわけ米中貿易戦争の直接の当事国である米国は2.5%、中国は6.2%ともに0.2%の下方修正となった。
出所:https://business.nikkei.com/atcl/report/16/071400054/101500083/
答えは米長期金利の上昇、米中貿易摩擦、世界経済の不安による世界同時株安ですね。
2019年は2018年に落ち込んだ株式市場が反発し、その結果が高いリターンに現れているといっても良いでしょう。
やはり、農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンドも伝統的な米国大型株を購入しているだけあって指数に連動してリターンが大きく変わってくることがわかります。
やはり安定して資産をふやしていくためには市場環境に依拠せずにリターンを得られるファンドに投資をしたほうが懸命かと思います。
BMキャピタルなどヘッジファンドのように下落相場もリターンを狙っていく投資は実行できないのは残念ですが、米国株に投資をしたいと考える投資初心者の方には向いている投資信託かもしれません。
リターンは少しボラタイルですね。長期投資なので、10年、20年トータルで勝っていれば良い、という投資ですので、その点は理解しておきましょう。
そもそも「農林中金<パートナーズ>長期厳選投資 おおぶね」は積み立て投資なので、まとまった資金を運用したい人には向きません。
NISA口座でも積み立て注文が可能です。アクティブ投信ですが、ポートフォリオを見ても、インデックス投資に近い属性ですね。
分配金(配当)実績
分配金(税引前)
- 21/06/21:決算:110円
- 20/06/22:決算:90円
- 19/06/20:決算:70円
- 18/06/20:決算:50円
買い方と解約方法、そして手数料
買い方は簡単です。販売会社は以下です。
- 農林中央金庫 (取扱いはJAバンク)
- 株式会社SBI証券
- 岡三証券株式会社(DC専用)
- 楽天証券株式会社
楽天証券やSBI証券などネット証券から購入ができ、こちらが一番簡単です。
買付手数料はなし、管理費用(含む信託報酬)が0.99%です。(対面証券などの場合は手数料がかかる)
アクティブ投信にしては、手数料は安い方です。積み立て注文のみということに注意しましょう。
掲示板での口コミ評判
掲示板でも、あまりポジティブな内容は聞かれません。これから円高が進み、金利引き上げ、維持を考えると、おおぶねに期待するのは厳しいでしょう。
まとめ
農林中金<パートナーズ>米国株式長期厳選ファンド(おおぶね)について分析しました。
長期米国株投資を積み立てで行うということで、インデックス投資に近い、しかしボラタイルな投資信託であるという印象を受けました。
米国株に投資をしたいのであれば、純粋にVTIやVOOなどを購入すれば良いのかな?そちらの方が安全そう、という印象でした。
もしポートフォリオの中に、自分が気になる銘柄があるなど縁があれば良いかと思います。
しかし、投資はやはりリターンを追い求めるものですので、指数をオーバーパフォームする投資を狙うのであれば、他の選択肢もあると考えます。
おおぶねで積み立て投資というと「?」が浮かんでしまいますね。
一括で投資できればまだ良い気がしますがそれも少し米国のボラの高い銘柄が組み入れられているので恐怖感はあります。
様々な有望ファンドがある中で、おおぶねを選ぶ理由はあまり見つからないと思いました。
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