BMキャピタルは老舗のヘッジファンドです。
筆者も8年以上にわたり投資しているヘッジファンドです。現在は1億円を預けておりポートフォリオの主軸になっています。以下でBMキャピタルの全体像を詳しく解説しています。
でも実際、BMキャピタルってどのような運用手法なのか?
バリュー株投資を主軸としていると聞いているけどどんな投資手法なのか?
他にはどのような投資戦略をとっているのか?
という運用に関する部分については一般にはベールに包まれています。
しかし、投資家に対しては四半期運用報告書で具体的な運用手法と現在のファンドマネージャーの相場観について記載されています。
筆者は一投資家としてだけではなく、自分の投資力を高めるために勉強のために運用報告書を熟読しています。
確かに基本はバリュー株投資を主軸に添えていますが、他にも相場に応じて様々な戦略を組み合わせていることが見えてきました。
本日は5年以上にわたり四半期報告書を分析してきた筆者の視点でBMキャピタルの運用手法について投資家視点でお伝えしていきたいと思います。
何故、下落を免れながら安定した成績を出せている理由の一端が見えてくるかと思います。
主要戦略:グレアム流の「ネットネット株」投資を先鋭化したバリュー株投資
平常時にBMキャピタルが主要戦略として採用しているのが本格的なバリュー株投資です。
BMキャピタルが採用しているバリュー株投資は巷の投資信託が行うバリュー株投資とは一味も二味も違います。
源流はベンジャミン・グレアム流のネットネット株
バリュー株投資はそもそも投資の神様と謳われる「ウォーレンバフェット」の師匠であるベンジャミングレアムによって開発されました。
左がベンジャミングレアムで右がウォーレンバフェットです。
ベンジャミングレアムは50年以上投資家のバイブルとして読まれている「賢明なる投資家」や「証券投資」を著した伝説の投資家です。
「バリュー株投資の父」「ウォールストリートの最長老」と呼ばれています。
彼は不確定な将来の利益に対しては懐疑的な目でみます。企業の現在の資産と負債を記したバランスシートを精査することで投資対象を炙り出します。
企業のバランスシートでは総資産から総負債を差し引いて残った部分を純資産となります。
グレアムは資産の中から1年以内に現金化できる流動性資産から総負債を差し引いたものを正味流動性資産とします。
流動性資産は「現金」「売掛け金」「有価証券」「商品」を中心に構成されています。
一方、固定資産は建物や機械設備、のれん、土地など即座に現金化できないものとなります。
グレアムは、この正味流動性資産の2/3だけで、企業の時価総額を超える銘柄をネットネット株として投資対象としています。時価総額は「株価×発行済株式数」ですので企業を丸々購入することができる金額のことです。
通常、企業も価値というのは純資産に今後生み出す利益を加味した金額となります。
将来の利益を一切加味せず、固定資産も一切加味せず、さらに正味流動性資産を2/3にした金額で時価総額より高いという圧倒的割安銘柄を投資対象としているのです。
改良版のBMキャピタル流のネットネット株
先ほどのベンジャミングレアム流のネットネット株には一つ大きな欠点があります。
流動性資産の中には商品が含まれます。商品は全部売れるとは限りませんし、場合によっては陳腐化して既に価値がなくなっている可能性もあります。
そこでBMキャピタルでは商品を除いた「現金」「営業債券」「有価証券」を現金性資産として規定します。
現金性資産から総負債を差し引いた正味現金性資産が時価総額よりも高い銘柄を投資対象としているのです。
殆ど企業が純粋に保有する現金に近い正味現金性資産だけで時価総額を上回っている銘柄を投資銘柄として選定しているのです。
つまり、今この瞬間企業を清算するだけで利益がでるような銘柄に投資しているのです。
BMキャピタル流のネットネット株はこれ以上の下落余地が理論上存在しない銘柄を選定します。
そのため、相場下落局面において下落耐性が高く安定感のある成績を残すことができるのです。
ネットネット株の欠点〜割安に長期間放置される可能性がある〜
ネットネット株は今までお伝えした通り、通常では考えられないレベルで割安に放置された銘柄です。
大型株は証券会社のアナリストの目が光っているのでネットネット株の条件を満たす銘柄は存在しません。
しかし、日本には3000を超える銘柄が存在しています。
東証二部や地方証券取引所の上場銘柄の中には誰にも注目されずネットネット株となっている銘柄が存在しているのです。
言い換えると、ネットネット株は非常に小さい銘柄に多く、誰からも注目されていないので割安となっているのです。
そのため、今後も誰からも見向きもされず長期間割安に放置されてしまうリスクがあるのです。
ネットネット株の短所を克服するアクティビストとしてのBMキャピタル
BMキャピタルはネットネット株投資にアクティビスト戦略を組み合わせてネットネット株の弱点を克服しています。
ネットネット株は超小型株を投資しているのでファンドとして購入するだけで大株主になれるのです。
大株主となれば「物言う株主」として経営陣に株式価値を引き上げる提言を積極的に行うことができます。
自社株買を推奨したり、無用な資産の売却をすすめたりして企業価値を引き上げていくのです。
積極的に企業に働きかけることでバリュー株投資の効果を最大限に引き上げているのです。
→ 有名アクティビストファンド「BMキャピタル」の実際の事例を過去の組み入れ銘柄を取り上げてわかりやすく解説!
相場環境に応じて空売り(=ショート)も組み入れる柔軟さも持つ
BMキャピタルあhバリュー株投資を主軸としながらも、相場環境によって異なる戦略をとるときもあります。
例えば、今回の2020年のコロナショックが顕著な例です。
いくらネットネット株が安全性が高いといっても、株価が30%下落するような局面では流石に下落を被ってしまいます。
しかし、BMキャピタルはファンドマネージャーの判断で以下の2点を相場が暴落する1月にとっていました。
- 株式保有比率を減少させキャッシュポジションを増加させる
- 日経平均先物をショート
まさに暴落が始まる2020年1月末に上記を行い2020年1Qを無傷で乗り切ったのです。
長年のファンドマネージャーの経験と慧眼が成せる技ですね。
なかなか、コロナ色を無傷で乗り切ったファンドはないのでしょうか。
コロナショックだけでなく2013年の運用開始以来、7年間一度も年間ベースでマイナスの成績になったことはありません。
バリュー株投資だけでなく相場環境が急変する局面ではしっかりとヘッジをしてリターンを確保しながら相場下落を免れているのです。
投資対象は株式だけに留まらない
BMキャピタルは基本的には株式に投資をおこないますが、対象は株式だけに限定しているわけではありません。
直近でいうと、コロナショックの最中に金をポートフォリオの30%近く購入していたことが四半期レポートで確認されました。
米ドルと金は逆相関する性質があります。
コロナショックで米国が大規模な金融緩和をおこなったことで、金利の低下とマネーサプライの上昇がおこりました。
金利が低下すると当然、ドルの価値が下落しますし、マネーサプライの上昇とは市場に流通しているドルの増大を意味します。
結果的にドルの価値が金に対して相対的に下落して金価格は急騰を見せています。
わかりやすいのが以下金価格(青)と米10年債金利(赤)の比較です。綺麗に逆相関していますね。
2020年2Qで投資をしているので10%-20%のリターンは取れていることになります。
BMキャピタルはファンドマネージャーを中心にマクロ経済やファイナンスに通じたメンバーによって構成されているそうです。
株式以外に投資妙味が高いものがあれば積極的にリターンを追求する動きをとってくれるのも嬉しいところですね。
まとめ
BMキャピタルの基本戦略はベンジャミングレアムを源流とするバリュー株投資です。
高い安全域をもつ銘柄に投資を行い、能動的に株価を引き上げて安定した高いリターン獲得を目指します。
さらに、相場急落局面では適切な対応をとり下落を免れたり、
株式以外にも収益機械が見込まれる銘柄に投資を行い常に収益機会を追求しています。
今後も筆者の投資ポートフォリオの主軸を占めるファンドとして長期的に付き合っていきたいと考えています。