「リート(REIT)」という言葉を聞いたことがある方や既に投資を行っている方もいうのではないでしょうか。
リートもオルタナティブ投資の一つの形態であり配当利回りが高いことで注目されています。
果たして資産運用の投資先として適格なのかを紐解いていきたいと思います。
オルタナティブ投資は株式市場と異なる動きをすることで投資成績を安定化させる投資先として注目されています。
実際、東大の基金のポートフォリオも大きくオルタナティブ資産に傾けています。
今回はそもそもJリートがどのような資産なのかをお伝えした上で、現在Jリートが下がっている理由についてお伝えします。
Jリートが下がっている要因をお伝えした上で、今後の見通しについて考察していきたいと思います。
J-REIT(リート)とはどのような金融商品なのか?-何故高配当利回り?-
まずは、そもそもJ-REITとは何なのか?
何故高配当利回りを実現できているのかという点について説明します。
J-REIT(リート)の仕組み!不動産投資信託の実態とは?
まずJ-REITはJとREITにわかれますが、Japan-REITということです。
REITは約さずに書くと、Real Estate(不動産) Investment Trust (投資信託)、
つまり不動産投資信託ということになります。
REITは1960年代に米国で開発された仕組みです。日本では2000年に投資信託法の改正により投資信託が不動産への投資を行うことが出来るようになりJ-REIT(リート)が誕生しました。
J-REITは投資法人であり株式会社の会社にあたるものでJ-REITが発行する投資証券を購入することで、
投資家は間接的に不動産に投資を行うことが出来るようになります。
J-REITは後で詳しく記載しますが、保有している不動産からの賃料収入や売却益を投資家に分配します。
またJ-REITは不動産を新規に購入する為の資金を投資家から集めた資金の他に、
銀行等の金融機関から融資をうけたり社債を発行して資金を調達して不動産を購入することもあります。
J-REITの特徴として不動産の運用を行うことを禁止されていますので資産運用会社に運用業務を任せています。
Jリートは免税の優遇がある
Jリートの大きなメリットとして税的な優遇措置が挙げられます。
Jリートでは賃料収入や売却益で得た利益の90%を分配することで免税となります。
通常の上場企業の場合は得られた利益に対して法人税がまず発生しますので、分配金をだすことで通常の法人に比べて支払う税金を抑えることができるようになります。
そのため、Jリートでは通常の上場企業の配当金よりも多くの分配金をだすことになります。
平均して分配利回りは高く4%以上となっています。
しかし、メリットばかりではありません。
通常の上場企業は得られた利益を再投資することで利益を拡大させていくことができます。
一方、Jリートは利益をほとんど分配してしまうので再投資を行うのが難しいです。そのため、頻繁に新規で資金調達を行い持分が希薄化してしまうという状況が発生します。
長期的な目線で複利を味方につけて大きなリターンを獲得するならばJリートはあまり適した選択肢とはいえません。
Jリートの配当利回りランキング
ちなみに2024年4月現在の分配利回りの上位10位は以下となります。
平均の分配利回りが4.5%であることを考えると特筆して高い分配利回りを有するリートがあるわけではないということですね。
証券 コード | 投資法人 | 分配金 利回り (%) |
---|---|---|
3470 | マリモ地方創生リート投資法人 | 5.50 |
3492 | タカラレーベン不動産投資法人 | 5.36 |
2989 | 東海道リート投資法人 | 5.29 |
3488 | ザイマックス・リート投資法人 | 5.27 |
3249 | 産業ファンド投資法人 | 5.25 |
8963 | インヴィンシブル投資法人 | 5.12 |
3476 | 投資法人みらい | 5.09 |
3451 | トーセイ・リート投資法人 | 5.07 |
8975 | いちごオフィスリート投資法人 | 5.03 |
3296 | 日本リート投資法人 | 5.03 |
ちなみに最も低い分配利回りのJリートも3%程度なので、分配利回り3%-5.5%の範囲に全てのJリートの分配利回りがあります。
コラム:J-REIT(リート)登場の背景
先程米国でリートは1960年に開発されたのに日本版のリートであるJ-REITが出来たのが2000年と米国と40年もの差があるとお伝えしました。
逆にいうと日本では高度経済成長期で不動産価格が急上昇しており敢えて証券化して販売する必要がなかったのです。
しかし1990年のバブル崩壊以降、銀行では不良債権問題による貸し渋りが頻発しました。
企業が資金を調達できなくなったのです。
バブル期に保有してしまった不動産を証券化することにより売却することで企業の資金調達の一助とするニーズが高まりました。それまで株や債券の投資に限定されていた投資信託法が改正され不動産も投資対象となりJ-REITが誕生しました。
現在は60以上のJ-REITが存在しています。
Jリートが下がってるのはなぜ?どこまで下がる?
それでは本題に移っていきましょう。最初にお伝えしている通り、JリートはTOPIXが上昇していくなかで下落を続けています。
これは主な要因として2点あります。1点目は金利が上昇傾向にあることです。以下は日本の30年債金利の推移です。2021年までは1%未満だったのに現在では2%を超えてきています。
金利が上昇すると当然不動産価格には下押し圧力になります。金利を含めた最終的な返済額が高くなるので需要が減少して価格が低下していきます。
もう一つの要因はパンデミックによって東証REIT指数で最大ポジションをしめるオフィス型リートの価格が大幅に下落していることが挙げられます。(総合型の中にも当然、オフィス型リートが組み入れられています。)
パンデミックによってリモートワークが進展したことで、オフィスの需要が急激に縮小していったのです。それにも関わらず以前から計画されていたオフィスビルの供給が継続したため価格が低下していきました。
実際、オフィスビルの賃料指数は2018年時点から15%程度下落し、空室率は3倍以上となっています。
賃料指数(2010年=100) | 空室率 | |
---|---|---|
2018 | 120.7 | 1.90% |
2019 | 127.9 | 1.60% |
2020 | 131.5 | 4.50% |
2021 | 110.9 | 6.30% |
2022 | 107.7 | 5.90% |
2023 | 106.5 | 5.60% |
2024 | 106.1 | 5.50% |
2025 | 102.9 | 6.70% |
2025年からのJ-REITの今後の見通しは?今は買いか?
では、肝心なJリートの今後の見通しについて見ていきましょう。
トランプ大統領誕生で日本の金利も上昇圧力がかかっている
まずは金利についてです。大統領選でトランプ氏が勝ったことで2025年からトランプ政権が誕生することが決定しました。そして共和党が議会も制したことでトランプ大統領の政策が通りやすくなりました。
トランプ大統領は「移民抑制」「法人減税」「関税強化」を掲げており、これにより米国でインフレ再燃する懸念が高まっています。
米国でインフレが再燃すると米国の金利が上昇して、日米金利差が拡大します。
日米金利差が拡大するとドル円が上昇します。つまりドル円が200円を目指していくということになります。
こうなると輸入物価の上昇を通じて日本のインフレも急騰してしまいます。そのため、日銀は通貨防衛のために金利を引き上げざるを得なくなるのです。
これは、当然日本の住宅市場にとっては向かい風となっていきます。
2025年にオフィスリートの供給が継続する
さきほどリモートワークの推進でオフィスリートの需給が崩れているとお伝えしました。
このような状況下で、2025年度は例年よりも多いオフィスの供給が想定されています。事前に計画されていた分を撤回するわけにもいきませんからね。
つまり需給がさらに緩んで価格の低下方向の圧力が継続することとなります。
以上のことからJリートは引き続き厳しい見通しであるということができるでしょう。
J-REITよりも安全に尚且つ年率10%を狙うオルタナティブ投資
J-REITは先ほどの図からみても分かる通り、価格の変動が激しいという難点があります。
価格変動率でいえば株価と同様の高さとなっています。
殆ど株式市場に連動する動きをしているため株式市場下落局面での投資ポートフォリオの下落を抑制することはできません。
近年オルタナティブ投資の必要性は年々高まってきております。
実際、年率20%程度のリターンを出し続けている米国の一流大学基金は投資ポートフォリオの70%近くをオルタナティブ投資に咲いています。オルタナティブ投資の中でも注目されているのがへッジファンドです。
以下はイェール大学とハーバード大学基金のポートフォリオです。
ヘッジファンドのパフォーマンスは下落を抑制しながら株式市場を凌駕しています。
株価と異なる動きをしながら素晴らしいパフォーマンスを出しているので、安定的なポートフォリオの組成には欠かせない存在となってきています。
筆者が投資しているヘッジファンドでも2013年の運用開始以来幾度の暴落を乗り切り平均的に年率10%のリターンを叩き出しています。
以下のランキングで詳しくお伝えしていますのでご覧いただければと思います。