よくニュースなどで取り沙汰されるものの、なかなか身近ではないヘッジファンド。
個人投資家にはアクセスするのが難しい状況になってはいますが、超富裕層や機関投資家に人気を博して運用残高を右肩上がりに伸ばしています。
今回はそんなヘッジファンドの手数料体系について取り上げたいと思います。
資金を預けたら高い手数料を取られてしまうのではないかと想像してしまう方が多いのではないでしょうか?
しかし、実態はそんなことはなく、むしろ多くの投資家が購入する投資信託の方が高い手数料を取っていることに気づかされると思います。
今回は、実際にヘッジファンドで資産運用を10年間続けてきた私が、ヘッジファンドの手数料の基礎を解説していきます。
初めてこの記事に辿り着いた方はそもそもヘッジファンドとはどのような存在かを以前の記事で紹介しています。私募ファンドと公募ファンドの違いと併せて理解しましょう。
→ 富裕層向け金融サービス!ヘッジファンドとは何者?わかりやすく簡単に解説!
ヘッジファンドの手数料体系
ヘッジファンドで資産運用をした場合、基本的には2つの手数料がかかってきます。
「ヘッジファンドといえばこの手数料!」と言われる「成果報酬型」。もう一つは「管理手数料」です。
それぞれ丁寧に説明していきます。
管理手数料(信託手数料)
管理手数料はヘッジファンドを維持するためのものです。投資信託でいうと信託手数料に相当します。
ヘッジファンドを運営するには、社員の給与やオフィスなど多々ありますが、これは多少私の想像も入っていますが情報を獲得する費用が甚大であると考えています。
高いリターンを出すために、どのような相場でもリスクを積極的に取って、価値のある情報とヘッジファンドマネジャーの手腕で大きな利益を獲得していく。
管理手数料は基本的にはファンドが攻め続けるための最低維持費用でしょう。2%程度が通常かと思います。
投資信託は一過性の購入手数料を除けば信託報酬のみが利益の源泉となっています。
次の項目で説明する成功報酬手数料は基本的には設けられています。最近、一部のファンドでは成功報酬併用型も出てきていますが、依然としてマイノリティです。
そのため、運用リターンをだすことよりも、より大きな資産を預かることに重点をおいた商品設計がなされています。
例えば、テーマ型の投信ですね。その時に流行したテーマにそった商品を設計して資金を募る傾向にあります。しかし、残念ながら、テーマが盛り上がっている時というのは既にブームの頂点であり、その後は悲惨な成績になっています。
当サイトでもテーマ型投信を分析していますが、散々な結果になっています。興味のある方はご覧ください。
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成果報酬型の手数料
成功報酬型の手数料。管理手数料(=信託手数料)に加えて成功報酬が設定されているので、ヘッジファンドの手数料は高いなと考えた方が多いでしょう。
しかし、本質を見誤ってはいけません。この成功報酬型手数料があるからこそヘッジファンドのファンドマネジャーは真剣にリターンを追求することができるのです。
この報酬を得ることを魅力と考えて、一流投資銀行や投資信託で優秀だったファンドマネジャーはヘッジファンドを設立するといっても過言ではありません。
私のような個人投資家としても、成果報酬型の手数料は非常に「フェア」だと思いますね。
ヘッジファンドでは、成果報酬型の手数料として、運用して獲得した利益の20〜50%を設定していることが多いです。
個人投資家が1,000万円をヘッジファンドに預けて、ヘッジファンドが1年間で30%のリターンを出した場合、投資元本は1,300万円。
30%の投資リターンの内の半分の15%を手数料として徴収します。投資家に残るお金は1,150万円ですね。この手数料は、運用益が出た場合に限ります。
投資信託は運用益が出ず、マイナスが出ても信託報酬を当たり前と言わんばかりに取っていきます。ヘッジファンドはマイナス運用の場合は成果報酬型の手数料はかかりません。
その分、ヘッジファンドのマネジャーは成果を出すことに必死です。リターンをだすことで報酬が大幅に上昇しますからね。
ヘッジファンドはリターンをだす自身がある本物のプロが運用しています。成功報酬がないアクティブ型投信の運用チームとは質が違うのがご理解いただけるかと思います。
手数料の高いヘッジファンドの方が高い成績を残している
そして、重要なことはヘッジファンドの中でも高い手数料を徴収しているファンドが高いリターンを残しているというデータが存在していることです。
以下は世界的な金融機関であるバークレイズキャピタルの調査に基づくデータです。
「確立されたマルチストラテジー運用会社は強力なブランドを持ち、最高の人材を採用できるとともに多くのデータを購入しインフラストラクチャーに投資する力もある」と、バークレイズの戦略コンサルティング米責任者、ロアーク・スターラー氏が解説。「コストを投資家に転嫁するため運用会社にとっても利益だが、高い料金を払ってもなおリターンが大きいので投資家にとっても問題はない」と指摘した。
こうしたパススルー手数料はほとんどの場合、預かり資産の2%、利益の20%を請求するいわゆる2/20モデルよりも高い。最も高額な項目であるポートフォリオマネジャーの報酬が含まれるからだ。資産の一定割合やコストの一部を課す「伝統的な」ファンドの中では合計手数料が高い企業の方が優れた純リターンとアルファを生み出したことも分かった。
わかりやすく図解すると以下となります。高い手数料(=High fees)のファンドの方が、高いアルファリターン(=インデックスに対する超過リターン)をあげているという結果になっています。
多くのヘッジファンドで採用されるハイウォーター・マーク方式とは?
成果報酬型の手数料は、ヘッジファンドは基本的に30〜50%程度だという話を上記でしました。
ここで気をつけなけらばならない点として、「ハイウォーター・マーク」というものがあります。
大手証券会社のページにもわかりやすい定義が掲載されていたのでそちらも引用します。
色んな角度から読んだ方がわかりやすいので複数引用します。
ハイウォーター・マークとは、信託報酬のひとつである「成功報酬」を算出するための基準となる価額のことで、投資信託の設定時に条件や計算方法が決められます。
成功報酬を取る投資信託で使われることがあり、この報酬形態をハイウォーター・マーク方式といいます。投資信託の値段である基準価額がハイウォーター・マークを上回った場合に、信託財産から成功報酬が差し引かれます。
報酬額は、「ハイウォーター・マークより上回った基準価額に対して何%」といった形で出来高制が採用されています。
出所:SMBC日興証券
投資信託の信託報酬のうち、成功報酬を算出するための基準となる価額のこと。一般的な信託報酬はファンドの純資産総額に対してあらかじめ決められた比率を掛けて算出される。
ハイウォーターマーク方式の場合、ファンドの基準価額が一定水準(ハイウォーターマーク)を超えた部分に対して、さらに成功報酬を運用会社が受け取る仕組みとなっている。ヘッジファンドの手法を用いる投資信託に採用されるケースがある。
出所:野村証券
成功報酬が支払われる基準となる水準。
一般的な投資信託では、ファンドの純資産総額の一定の割合の信託報酬が信託財産から支払われます。ハイウォーターマーク方式では、通常の信託報酬に加え、事前に決めた水準を超えた部分について成功報酬が支払われます。
ハイウォーターマーク方式は、ヘッジファンドなどで採用されています。
出所:大和証券
わかりやすく図解したものが以下となります。
あくまで、前回の高値を超えた部分に対して成功報酬手数料が発生するということですね。非常にフェアな手数料であるということです。
投資信託の手数料の落とし穴
ここまでヘッジファンドの手数料体系について解説してきましたが、投資信託の手数料について思うことがたくさん出てきました。
投資信託の手数料と言えば、2〜5%程度の購入手数料と信託報酬(預け入れ資産に対して0.5~2%(+消費税))があります。
ヘッジファンドでも、管理手数料という名目で信託報酬のような、ファンドを維持するための手数料は存在します。
しかし、私募ファンドと公募ファンドとの違いでも解説しましたが、公募ファンドとは不特定多数の人々に公に宣伝を打ち、とにかく投資家を集めるという側面があります。
片や、ヘッジファンドは限られた投資家から管理手数料を貰い、ファンドを最低限運営する程度の手数料しか徴取していないのが基本です。
不特定多数の投資家をとにかく熱心に集めて信託手数料で大きな利益を獲得し、成績はいまいちな投資信託。(指数連動型のインデックス投信は良いでしょう)
市場平均以上の収益をめざす「アクティブ型」の投資信託は、平均並みをめざす「パッシブ型」より運用成績が悪い。そんな報告を金融庁がまとめた。アクティブ不振の一因は、運用報酬で運営費用すらまかなえない小規模な投信の乱立。その背景には、販売会社と運用会社の強固な結びつきという独特な業界構造がある。
確かな実績を積み上げ、マーケットという戦場で結果を出し、成果報酬型で給与が大きく変わるヘッジファンド。
違いは明確ですが、ヘッジファンドは出資している投資家と同じボートに乗って戦っていると言っても良いでしょう。
ヘッジファンドの選定は大切ですが、運用会社としての仕組みは投資信託よりもヘッジファンドの方がかなり良心的であると私自身は感じています。
まとめ
今回はヘッジファンドの手数料についてざっくりと解説させていただきました。
基本的に、ヘッジファンドの手数料は成果報酬型、管理手数の2つがかかり、多少高いように見えます。
しかし、上昇市場や下落市場に関わらず積極的にリターンを取りに行き、結果を出す点では投資信託とは大きく異なりますのでベットする価値は十分にあると思います。
ご不明点ありましたら、コメントなどで質問いただければと思います。
以下では日本の個人投資家でも投資ができるヘッジファンドにつして纏めていますのでご覧いただければと思います。