現在は金融環境が整備されてきており、日本からでも世界の株式に投資できるようになってきました。
日本で日本だけでなく世界の株式に投資できる投資信託が多く存在しています。
本日はインベスコが運用するインベスコ世界厳選株式オープン(愛称:世界のベスト)について分析していきたいと思います。
世界のベストは全世界を対象とした投資信託の買い付けランキングで第3位となっています。当サイトでも以前取り上げた4位の「ひふみプラス」、5位の「キャピタル世界株式ファンド」を上回っています。
実際、純資産は1兆円を超えてきており急激に増えてきています。
本日は世界のベストの特徴をお伝えした上で以下の点についてお伝えしていきたいと思います。
✔︎ なぜ、人気なのか?
✔︎ リターンはどうなっているのか?
✔︎ 今後の見通しはどうなのか?
インベスコ世界厳選株式オープン(愛称:世界のベスト)の特徴
まずは特徴についてみていきたいと思います。
そもそもインベスコ社とは?
インベスコは米国のアトランタに本拠地を置く独立系の資産運用会社です。
ニューヨーク証券取引所に上場しており、運用残高は1兆6000億ドル(約200兆円)となっています。
日本の国家予算が100兆円であることを考えると、とんでもない巨額の資産を運用していることがわかりますね。
北米を中心にサービスを提供し、リテール(個人)だけでなく機関投資家向けのファンドも運用しています。
以下はインベスコの巨大さを図解したものです。
投資対象は世界の株式
投資対象は新興国を除いた世界の先進国の株式となります。インベスコ世界厳選株式オープンはアクティブファンドです。
→ アクティブファンドはやめとけ?パッシブ運用型の投資信託のどちらがよいかデータを比較しながら検証!
アクティブファンドはインデックスに対してプラスのリターンを目指しています。インベスコ世界厳選株式オープンが対象とするインデックスはMSCIワールド・インデックス(円換算指数)です。
つまり全世界の平均的な株価を表す指数に対してプラスのリターンを目指しているということですね。
銘柄選定は以下のプロセスで行なっているとしています。(参照:目論見書)
第一段階 投資アイディアの発掘 | 世界各刻の株式の中から以下の活動を通じ投資アイディアを発掘 ✔︎ 企業とのミーティング ✔︎ グループ内での情報交換 ✔︎ 他社のアナリストとの情報交換 |
---|---|
第二段階 ファンダメンタルズ分析 | ✔︎財務力:営業CFを生み出す力に注目 ✔︎経営力:経営者の実力を評価 ✔︎ビジネス評価:業界環境や企業の競争力などを評価 ✔︎バリュエーション:各種の株価評価指標に基づいて割安度を測定 |
第三段階 ポートフォリオ構築 | ✔︎ファンダメンタルズ分析を基にボトムアップアプローチによりPFを構築 ✔︎組み入れ銘柄の選択にあたっては、現在の組み入れ銘柄の評価、新規リサーチ・アイディアを基に決定 |
選ぶ銘柄は以下のとおり配当が高く利益成長率が高い割安成長株としています。聞こえはいいですね。
最新の世界のベストの組み入れ上位銘柄
2024年8月末時点の世界のベストの構成上位銘柄については以下となります。
マイクロソフト以外は、若手投資家にとってはあまり有名な企業ではないですね。アメリカンタワーもユナイテッドヘルスもユニオンパシフックも米国のオールドエコノミーを代表するような銘柄です。
因みに2023年3月末時点からの世界のベストの構成上位銘柄の推移は以下となります。構成上位銘柄の顔ぶれは殆ど変わっておらず長期投資を行っていることが読み取れますね。
2024年8月末 | 2024年2月末 | 2024年1月末 | 2023年8月末 | 2023年6月末 | 2023年3月末 | |
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1 | 3i グループ | 3i グループ | 3i グループ | 3i グループ | 3iグループ | 3iグループ |
2 | ユナイテッドヘルス・グループ | マイクロソフト | マイクロソフト | ベラリア | ブロードコム | ベラリア |
3 | マイクロソフト | ユニオン・パシフィック | ユナイテッドヘルス・グループ | ブロードコム | マイクロソフト | AIAグループ |
4 | ロールスロイス | ユナイテッドヘルス・グループ | ユニオン・パシフィック | マイクロソフト | ベラリア | アメリカンタワー |
5 | ユニオン・パシフィック | ブロードコム | ブロードコム | アメリカン・タワー | アメリカンタワー | マイクロソフト |
6 | テキサス・インスツルメンツ | テキサス・インスツルメンツ | テキサス・インスツルメンツ | ユナイテッドヘルス・グループ | AIAグループ | ブロードコム |
7 | ロンドン証券取引所 | アメリカン・タワー | アメリカン・タワー | レキットベンキーザー | ユナイテッドヘルス・グループ | ユニオンパシフィック |
8 | インターコンチネンタル | アゼリスグループ | アゼリスグループ | ユニオン・パシフィック | ユニオンパシフィック | ロイヤル・ユニブリュー |
9 | コカコーラ | プログレッシブ | プログレッシブ | AIAグループ | ロイヤル・ユニブリュー | ユナイテッドヘルス・グループ |
10 | アゼリスグループ | トラクター・サプライ | AIAグループ | ロイヤル・ユリブリュー | アケルBP | コカコーラ |
手数料(購入手数料/信託手数料)
購入手数料と信託手数料は以下となります。
購入手数料:税込3.3%
信託手数料:年率税込1.903%
アクティブ投信の中でも高い水準ですね。
なぜ世界のベストは人気なのか?高分配利回りは永続するのか?
では、なぜ世界のベストが人気なのかをみていきたいと思います。
世界のベストは6つのパターンがあります。
為替ヘッジあり | 毎月決算型 |
奇数月決算型 | |
年一回決算型 | |
為替ヘッジなし | 毎月決算型 |
奇数月決算型 | |
年一回決算型 |
上記の中で最も人気があるのが為替ヘッジなしの毎月決算型のバージョンです。それはYahoo掲示板でのコメントの数からあきらかです。
「為替ヘッジなし」の「毎月決算型」は毎月150円の分配金をだしています。年間ベースだと1800円なので分配利回りは現在約20%となっています。
そして、人気の秘訣は以下のチャートです。
基準価格は殆ど10,000円近辺を維持しています。つまり、元本が変わらず年率18%の分配金を得られているため人気が急増しているのです。しかし、これはあくまで現在までの金融環境が株式市場に追い風だったことに影響を受けています。
ここから円高調整がはじまり、後でお伝えするとおり株価が下落する局面になると分配金は無くなり更に基準価額も下落する憂き目を見ることになります。
過去、素晴らしいからといって今後の未来も明るいとは限らないのです。なぜ、今後の見通しが暗いのかという点については見通しの欄で後述します。
基本的には、どのような相場でも堅実なリターンを上げられるファンドに資金を投じておく方が、長期的には報われることが多いと思います。
世界のベスト(毎月決算型・為替ヘッジあり)の分配金は持続可能なのか?為替ヘッジはつけるべき?
先ほどは為替ヘッジなしバージョンの毎月分配型についてみてきました。
では為替ヘッジありの毎月決算型は分配金を出しすぎなのか確認していきましょう。
元本から配当金をだしている特別分配金の状態になっていないのかという点が気になっている方がいらっしゃるかと思います。その点について見ていきましょう。以下は毎月決算型の基準価額の推移です。
基準価額が設定時の10,000円近くになっているので、リターンをほぼ全て分配金で拠出しているということが分かります。
つまり現状、特別分配金にはなっていないということですね。
年間の分配金は480円で推移しています。年間分配利回りは4%-5%ということになります。
為替ヘッジなしバージョンよりリターンが低い分、利回りが低くなっています。
また、今までは偶々為替がドル高円安に進んでいたので為替ヘッジなしのリターンが高くなっていました。
現在、ドル円は日米金利差に連動する形で連動しています。
しかし、今後は2022年からの拙速な金融引き締めによって米景気が後退することによって日米金利差が縮小して円高調整になる局面で為替ヘッジありの方がリターンが高くなります。
現在2024年3月から半年から1年という単位でみるのであれば為替ヘッジありのほうが合理的に思えます。
ただ、長期的にみると為替ヘッジコストが積み上がっていきますので為替ヘッジはつけないほうが資産形成には繋がるでしょう。いずれにせよ、複利効果を得るためには分配金をださずに資産価格を上昇させるのが合理的です。
目先の分配金より長期的なリターンの獲得を目指していきましょう。
インベスコ世界厳選株式オープンの運用実績
銘柄選択のリターンを単純にみたいのでインベスコ世界厳選株式オープンの運用実績(ヘッジあり・年1回決算型)の成績を確認していきたいと思います。
以下、ご覧の通りベンチマークであるMSCIワールドインデックスに劣後する成績となっています。アクティブファンドとして失格ですね。
年 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) |
---|---|---|---|
トータルリターン | 13.02% | 9.03% | 7.00% |
標準偏差 | 12.95 | 14.98 | 18.63 |
シャープレシオ | 1.01 | 0.60 | 0.38 |
では、他の全世界に投資しているアクティブファンドと比較すると以下となります。
青:インベスコ世界厳選株式オープン
赤:ロイヤルマイル
緑:キャピタル世界株式ファンド
インベスコ世界厳選株式オープンの口コミや評判
Yahoo financeでは掲示板で意見が交換されるのですが、年一回決算型のインベスコ世界厳選株式オープンの掲示板は閑散としています。
一方、毎月決算型の掲示板は盛り上がっていました。特に分配利回りが高い「為替ヘッジなし」バージョンの書き込みが多くなっています。
さんのおっしゃる通り、安心の分配で人気ですね!
他の投信からの移動も含めこれからもどしどし買い増しして行こう!
7月に購入して 8月 9月 とも 特別分配金
なので 平均取得価格が 50円くらい下がってました
嬉しいような悲しいような
昨年 お試しで一万円だけで始めて
毎月コンスタントに150円出てて
特別分配金となっても
口数は減らずにずっとそのまま。
こりゃいいと思って
今年からはガッツリいれてますわ。
毎月ありがたいっす
では、この20%もの高い分配利回りを今後もだせるのかという点について次の項目で詳しくみていきたいと思います。
世界のベストの今後の見通しとは?
重要なのは今後の見通しではないでしょうか。先ほど成績欄でみてきた通り、世界のベストは全世界株式と同じような動きをしています。
つまり、全世界の株式の動向が、そのまま世界のベストの見通しということになります。
また、全世界の時価総額の70%近くは米国株になるので米国株の見通しを考えることが非常に重要となってきます。
結論から申しますと、全世界の株式の見通しは暗いと言わざるをえません。その理由を2点お伝えしていきます。
見通しが暗い理由①:現在発生しているインフレは粘着する可能性が高い
2024年となっても世界中を襲っているインフレは引き続き猛威を振るっています。実際、粘着性の高いインフレは高い状態を維持しています。
2023年はエネルギー価格の上昇がとまったことでインフレ率がさがりましたが、2024年3月時点では原油価格が再び上昇に転じています。
米国や欧州ではインフレ再燃を絶対に塞ぎたいので、中央銀行は引き締めの手を緩めることができません。
金融緩和は株価を押し上げますが、金融引き締めは株価を押し下げていきます。以下、ご覧いただければわかるとおり直近まで株価が堅調だったのは1980年代から一貫して金利が低下してきたことに起因しています。
しかし、1970年代以来のインフレが発生したことで、ついに金利が上昇に転じたのが2022年からの動きです。
そして一度発生したインフレは長期間にわたって粘着します。実際、上図の左端を見ていただけばわかる通り1970年代は10年間金利が上昇し続けました。
1970年代はインフレが3回にわたって津波のように押し寄せたのです。
今回も同様に何度にもわたって押し寄せることが見込まれ始めています。実際、インフレ率は1970年代と同じ推移を辿っています。
現在と同じインフレが発生した1970年代は以下のとおり10年間株価が上昇することはありませんでした。途中暴落も経験しています。
このような環境で今までのような成績を期待するのは難しいというのがご理解いただけたかと思います。
今までがボーナスタイムだったのです。毎月分配型のバージョンでは元本割れが続き特別分配金を出し続けるという事態になりかねません。
更に以下のポイントも重要な点です。
見通しが暗い理由②:景気後退が近づいている
インフレが粘着して高金利がつづいたことで2024年末あたりで景気後退となる可能性が高まっています。
実際、失業率は急上昇をはじめる直前という構えを見せています。
金利市場もリセッションが高い可能性で発生することを織り込んでいます。
リセッションとなると当然、企業の利益は縮小して株価には下押し圧力となります。ここから米国をはじめとして全世界的に株価は厳しい状況となることが見込まれます。
金融市場に影響を受けずに安定したリターンを狙える投資先とは?
セクターローテーションや金利政策の影響を受けにくい投資先を選ぶ必要があります。
そのような投資先として魅力的なのがヘッジファンドです。
ヘッジファンドは以下の通り暴落を抑制しながら安定して株価指数より高いリターンを出しています。
例えば、筆者が投資しているオリエントマネジメントは2021年から運用を開始している中国株に投資をしているヘッジファンドです。2021年から2024年は中国株が軟調に推移しましたが、大きなリターンを獲得しています。
今後、中国株が上昇相場となる局面でどれほどの高いリターンを叩き出すか期待して投資をおこなっています。
まとめ
今回のポイントは以下となります。
- インベスコ世界厳選株式オープンは全世界の株式に投資
- 全世界株式に対して劣後する成績
- 今後の見通しも厳しい
相場環境によらず安定したリターンを見込むことができる投資先については以下でお伝えしていますのでご覧いただければと思います。